ドラゴンキング・エンターテインメント、小村明音のオフィスにて。
朝早くから、野村香織は上機嫌で、会社の全員にミルクティーを注文し、飲みながら小村明音の机の上にある数冊の小説を眺めていた。これらは今年ドラゴンキング・エンターテインメントが映像化を検討している作品だった。
読み耽っているところに、ポケットの携帯が鳴った。野村香織は画面も見ずに電話に出た。「野村です。」
電話の向こうから、会社の受付嬢の声が聞こえてきた。「野村社長、木村花絵です。今、一階に年配の女性がいらっしゃいまして、あなたのお祖母様だとおっしゃっています。」
野村香織は眉を上げた。「私の祖母?」
祖母という言葉は、彼女の口から出るとぎこちなく、記憶の中でもずっと長い間使っていなかった言葉だった。この電話がなければ、自分にまだ祖母がいることすら忘れるところだった。それは、この世界で血のつながった唯一の親族でもあった。
そう思うと、野村香織は冷ややかに鼻を鳴らした。血のつながりだの、親族だのと言っても、あの祖母の一家は人間とも呼べない存在だった。
野村香織は命じた。「誰であろうと、社員の仕事の邪魔をさせないように。」
木村花絵は答えた。「はい、野村社長。ご安心ください。絶対に入れさせません。」
野村香織は付け加えた。「止められないようなら、警備員を呼びなさい。」
そう言って電話を切った。その人が本当に祖母であろうとなかろうと、会いたくはなかった。あの一家が昔どんなことをしたのか、野村香織は決して忘れることができなかった。
それに、両親が生きていた頃から、祖母の家とは付き合いを絶っていた。両親が亡くなってからは、なおさらあの一家のことなど忘れていた。今になって突然現れて、何をするつもりだろうか。
……
ドラゴンキング・エンターテインメント一階ロビー。
受付の木村花絵は携帯をしまい、眉をひそめながら目の前の白髪まじりの老女と、その付き添いの男性を見た。男性は肩幅が広く、太った顔に大きな耳、ビール腹を突き出した、典型的な中年おじさんという風貌だった。
老女が尋ねた。「野村香織は何と言った?」