野村香織はメニューを渡辺大輔に渡して言った。「あなたの番よ」
渡辺大輔は頷いてメニューを受け取り、料理を選び始めた。しかし、目はメニューに向けられていたものの、頭の中では先ほどの野村香織と関口勇との会話を考えていた。以前はどうして野村香織がこんなに攻撃的な話し方をする人だと気付かなかったのだろう。しかも、一言一言が相手を半死半生にさせるような言葉なのに、言っていることは理にかなっていて、怒りたくても怒る理由が見つからない。
適当に数ページめくり、ウェイターに数品を告げると、渡辺大輔は注文を終えた。野村香織と何か話そうと思った矢先、テーブルに置かれた彼女の携帯が鳴り出した。
野村香織は画面を見た。小村明音からのメッセージだった。「香織ちゃん、今夜の食事会はどう?関口勇はどんな感じ?」