野村香織は男を一瞥して言った。「間違ってなければ、あなたと青木翔は幼馴染みですよね。でも、どうして彼に会うたびに、そんな怖い顔をするんですか?」
渡辺大輔は冷たく鼻を鳴らした。「うるさいからだ」
野村香織は少し意外そうに尋ねた。「どうしてですか?」
渡辺大輔は言った。「あいつは下品すぎるし、無駄話が多すぎるからだ」
野村香織は思わず笑みを浮かべた。青木翔のあの様子を思い出すと、渡辺大輔の言うことにも一理あるように感じた。確かに青木翔はとにかく話すのが大好きで、しかも余計なことを言い出すタイプだった。いいことは一つも言わず、人の不幸を喜ぶような話ばかりする。
野村香織は体を向け直し、バッグを持って外へ向かった。彼女の車は玄関前の駐車場に停めてあり、出口を左に曲がって二十メートルほどのところにあった。しかし、玄関を出てみると、渡辺大輔が後ろをついてきていることに気づいた。