たくさん着込もうと決めた野村香織は、スカーフを探し始めた。外の風はまだ強かったが、振り向いた時、横に置いてあったバッグが倒れ、開いていたバッグから精巧なジュエリーボックスが落ちた。
そのジュエリーボックスを見て、野村香織は少し驚いた。これは昨日、小村明音にプレゼントするために買ったものではないか?昨日警察署で見つからなかったのに、今になって出てきたのだ。野村香織はジュエリーボックスを拾い上げて開けると、金色に輝くブレスレットがその中に収まっていた。
「不思議ね、このブレスレットがどうして戻ってきたの?」野村香織は眉を上げた。
ジュエリーボックスとブレスレットを見つめながら、彼女は確信していた。昨日、このブレスレットは間違いなくバッグの中にはなかった。もしあったなら、わざわざ出さないはずがない。今日どうやって彼女のバッグに戻ってきたのかは、渡辺大輔に聞かなければならない。どうやって見つけ出したのかは分からないが、昨日ジュエリーボックスを静かに彼女のバッグに入れられたのは、渡辺大輔以外にいない。昨晩、彼女は渡辺大輔の車で少し居眠りをしていたのだから。