第304章 失って取り戻した金のブレスレット

たくさん着込もうと決めた野村香織は、スカーフを探し始めた。外の風はまだ強かったが、振り向いた時、横に置いてあったバッグが倒れ、開いていたバッグから精巧なジュエリーボックスが落ちた。

そのジュエリーボックスを見て、野村香織は少し驚いた。これは昨日、小村明音にプレゼントするために買ったものではないか?昨日警察署で見つからなかったのに、今になって出てきたのだ。野村香織はジュエリーボックスを拾い上げて開けると、金色に輝くブレスレットがその中に収まっていた。

「不思議ね、このブレスレットがどうして戻ってきたの?」野村香織は眉を上げた。

ジュエリーボックスとブレスレットを見つめながら、彼女は確信していた。昨日、このブレスレットは間違いなくバッグの中にはなかった。もしあったなら、わざわざ出さないはずがない。今日どうやって彼女のバッグに戻ってきたのかは、渡辺大輔に聞かなければならない。どうやって見つけ出したのかは分からないが、昨日ジュエリーボックスを静かに彼女のバッグに入れられたのは、渡辺大輔以外にいない。昨晩、彼女は渡辺大輔の車で少し居眠りをしていたのだから。

このゴールドブレスレットを甘く見てはいけない。30万円という価格だが、世界限定のライラックシリーズで、全世界でわずか10本しか製作されていない。このブレスレットは彼女が多くのコネを使って購入したものだ。だから渡辺大輔がどんなに優秀でも、こんな短時間でお金を出して新しいものを買い戻すことはできないはずだ。しかも、各ブレスレットには固有の番号が刻印されている。タグを手に取って確認すると、そこには0010と書かれており、まさに彼女が失くしたブレスレットの番号だった。

野村香織はジュエリーボックスの蓋を閉め、バッグを拾い上げた後、また心の中で悩み始めた。渡辺大輔の恩を受けるべきかどうか迷っていた。確かに今は元の持ち主に戻った状態だが、やはり渡辺大輔が見つけ出してくれたものだ。そしてこんなに短時間で見つけ出せたということは、きっと相当なお金を使ったはずだ。しかし、もし渡辺大輔に返してしまえば、小村明音が切望していたこのブレスレットはなくなってしまう。このゴールドブレスレットを購入するために、彼女は3、4つもの人情を借りているのだ。