第323章 賭けの約束を果たす

彼は野村香織を見ると自分を見失うわけではなく、今日はそもそもゴルフをする気がなかったのだ。完全に川井遥香と青木翔に無理やり連れてこられただけだった。ただし、ここで野村香織に会えたのは、二人が間接的にいいことをしてくれたとも言える。

彼がやる気がないのを見て、野村香織はもう何も言わなかった。相手がやりたくないならそれでいい、自分には関係ないことだ。そこで彼女は川井若菜の方を向き、再び高度なテクニックを教えたが、残念ながら川井若菜の才能はあまりなく、野村香織の指導はほとんど無駄になってしまった。

遊んでいると時間が過ぎるのは早いもので、気づけば五人は午前中から夕方まで遊んでいた。日が暮れ始めた頃、みんなでクラブを片付けて帰ることにした。

みんな以前の賭けのことを忘れていたが、青木翔は久しぶりに勝ったので当然忘れるはずもなく、川井遥香に賭けの約束を果たすよう直接促した。そこで川井遥香は呆れた表情で正門の前に立ち、野村香織たちは七、八メートル離れた場所でその様子を見守ることにした。

この時間になると、ゴルフをしに来た人たちはほとんど帰り支度をしていた。そのため川井遥香はすぐに最初の人が出てくるのを待つことができた。まだ距離があったものの、みんなははっきりと見ることができた。それは太った体型で派手な化粧をした中年の女性で、その太い足だけでも野村香織より重そうだった。

この光景を見て、青木翔は意地悪そうに言った。「ふふ、これは本当にヤバいことになったな!」

渡辺大輔でさえ思わず口角を上げ、同情的な目で川井遥香を見た。今夜帰ってから歯を十回磨くことになりそうだと思ったが、彼もただ心の中で川井遥香のために三秒間黙祷するだけで、この親友を救おうという気は全くなかった。

しかし、その中年女性が正門を出ようとした瞬間、若くて可愛らしい影がゴルフ場から走り出てきて、一歩差で中年女性を追い越して外に出た。

川井若菜は眉を少し上げて言った。「お兄ちゃん、運がよすぎじゃない?」

走り出てきた若い女の子を見て、野村香織も意外そうに言った。「おめでとう、いい子じゃない。あなたは運がいいみたいね。」

しかしその女の子は門を出た後、彼らの方向には来ず、反対側に走っていった。青木翔は急いで叫んだ。「おい、川井さん、何をぼーっとしてるんだ、早く追いかけろよ!」