第318章 酒は酒で茶は茶で

「キャディと一緒にプレーするから、行かないわ」と野村香織は断った。

青木翔は諦めずに言った。「でも、人数が多いし、みんなで集まって楽しく遊べるじゃないか」

「ごめんなさい。私、賑やかなのが一番苦手なの」と野村香織は再び断った。

目を動かしながら、青木翔はまた言った。「一緒に来てよ。今日は渡辺大輔も来てるんだ」

野村香織は意味ありげな笑みを浮かべながら青木翔を見た。「私たち離婚して一年以上経つのよ。元夫婦を一緒にゴルフに誘うなんて、適切だと思う?」

青木翔は反論できなかった。相手の言い分はもっともだと感じたが、心の中では疑問が残っていた。先日レストランで渡辺大輔と野村香織が一緒にいるところを見かけたのに、今日はどうしてこんなに冷たくなったのだろう?

「ああ、そうだ。川井遥香の妹の若菜も来てるんだ。さっきからずっとあなたのプレーを見ていて、プロ選手よりも上手いって褒めてたよ。彼女は初心者で、教えを請いたいんだけど恥ずかしがってて。だから僕が来たんだ。まさかあなたが...」と青木翔は慌てて説明した。

野村香織は彼を無視し、隣のキャディに微笑みかけて言った。「ボールを拾ってきてくれない?ごめんね」

キャディは若いイケメンで、体つきは細身だが、顔立ちは爽やかでハンサム、一目で運動好きの青年とわかった。彼は野村香織の魅惑的な微笑みに耐えられず、命令を受けるとすぐに逃げるようにボールを拾いに走っていった。

キャディの可愛らしい様子を見て、野村香織は思わず笑みを漏らし、それから青木翔に向き直った。「申し訳ないけど、期待に添えないわ。私のゴルフは並程度だし、コーチでもないから人に教えられないの。それに、コートにはプロのコーチがいるでしょう。川井若菜さんが興味があるなら、簡単にコーチを頼めるはずよ」

野村香織の言葉は隙のないものだった。青木翔は何と言えばいいのかわからなかったが、渡辺大輔の言う通り、彼の最大の長所は厚かましさだった。野村香織を説得できないと悟ると、もう体面など気にしないことにした。「香織さん、正直に話すよ。実は僕たち、賭けをしたんだ」

それを聞いて、野村香織は笑い出した。「あら、やっと本当のことを話してくれるの?」