第329章 解雇された

小島悠里にそんな風に騒がれたことで、彼女は一つのことを理解した。自分はそれほど寛容ではなく、心の奥底では渡辺大輔に対して不満を抱いていたのだと。他でもない、虐げられた3年間の中で、もしこの男が一度でも彼女のために立ち上がり、守ってくれていたら、彼女の心はこれほど渡辺大輔を恨むことはなかっただろう。

しかし、渡辺大輔は彼女のことを一度も気にかけたことがなく、他人が彼女をいじめているのを目の当たりにしても無関心だった。そして彼女は何度も失望し、その失望が積み重なった後では、どんなに未練があっても、どんなに愛していても別れることになる。結局、人は前を向いて生きていかなければならないのだから。そして彼女は既に渡辺大輔から離れた以上、もう二度と戻るつもりはなかった。

車に乗り込んだ野村香織は、すぐにエンジンをかけなかった。彼女の表情からは喜怒哀楽を読み取ることはできなかったが、自分の今の混乱した状態をよく理解していた。小村明音からの電話さえも切ってしまった。今は明音の話を聞く気分ではなく、自分も何も話したくなかった。特に、まだこれらのことを乗り越えられていないことを明音に知られたくなかった。