渡辺大輔はブローチを拾い上げた。今日、野村香織は白いタートルネックのセーターを着ていた。セーター全体がシンプルだったので、野村香織はこのブローチで装飾していた。渡辺大輔はティッシュでブローチを包み、慎重にポケットにしまった。
……
花浜ヴィラ。
野村香織がクローゼットでセーターを脱いだとき、付けていたブローチがなくなっていることに気づいた。このプラチナのブローチは高価なものではなかったが、小村明音が直接デザインして作らせてくれたプレゼントだった。ブローチ全体のデザインは「XYY」という三つの大きな文字で、香織ちゃんという意味だった。
野村香織は眉をひそめ、何度もブローチがなくなったことを確認すると、眉間にしわを寄せた。ブローチは小さく、どこかの角に落ちていたら見つけるのは難しい。今日は長時間外出していて、庭園、ヴィラ、車の中、中庭など、たくさんの場所に行っていた。どこで落としたのかわからず、それを見つけることは大海から針を探すようなものだった。