青木翔が頭を掻きながら困っている様子を見て、野村香織は少し面白くなり、この局は青木翔に勝たせてあげようと思った。そろそろ帰る準備をしなければならない。久しぶりにトランプをしたら、時間を忘れてしまった。
しかし、野村香織が「パス」と言おうとした瞬間、男性の長い指が伸びてきて、彼女の手札から爆弾を抜き取った。「これで止めろ」
野村香織は少し驚き、渡辺大輔を見つめた。さっきまでトランプに夢中で、渡辺大輔が入ってきたことにも、彼が後ろで見ていたことにも気付かなかった。彼女が呆然と自分を見つめているのを見て、渡辺大輔は長い睫毛を瞬かせながら「ただの提案だよ、君次第だ」と言った。
青木翔は不機嫌そうに渡辺大輔を睨んで言った。「大輔、それは反則だろう。観戦者は黙っているのが紳士的だってわかってるだろ」
これを聞いて、野村香織はもうその爆弾を出すわけにはいかなくなり、「パス」と言うしかなかった。
この局では彼女と川井遥香が農民で、青木翔が地主だった。この時点で、野村香織の手札にだけ爆弾が残っていた。彼女がパスし、川井遥香もパスしたので、青木翔は急いで1枚のカードを出してこの局を終わらせた。
青木翔は喜んで言った。「勝った!ハハハ、やっと勝てた!こんなに長く遊んで、初めて勝てたぞ」
そう言って川井遥香を見ながら、嫌そうな顔で言った。「川井さん、野村香織さんを見習えよ。彼女のトランプの打ち方を見ろよ。お前の打ち方はなんだあれは」
川井遥香は舌打ちして反論した。「黙れよ!香織さんは大きいカードを持ってたのに出さなかっただけだろ。わざとお前に勝たせてあげただけなのに、調子に乗るな。今夜は誰よりもお前が負けてるんだぞ」
青木翔は不満そうに反論した。「でたらめを言うな!まるでお前が今夜勝ってるみたいな言い方だな。お前だって俺と大して変わらないくらい負けてるだろ?」
川井遥香は口を尖らせて手を広げた。「少なくとも一番負けてるのは私じゃないわ。誰が一番負けてるか、本人が一番わかってるでしょ」
青木翔:「……」
野村香織は二人を見て笑いながら言った。「川井社長、青木様、もう夜の8時半です。私そろそろ休みに帰らないと」