青木翔が頭を掻きながら困っている様子を見て、野村香織は少し面白くなり、この局は青木翔に勝たせてあげようと思った。そろそろ帰る準備をしなければならない。久しぶりにトランプをしたら、時間を忘れてしまった。
しかし、野村香織が「パス」と言おうとした瞬間、男性の長い指が伸びてきて、彼女の手札から爆弾を抜き取った。「これで止めろ」
野村香織は少し驚き、渡辺大輔を見つめた。さっきまでトランプに夢中で、渡辺大輔が入ってきたことにも、彼が後ろで見ていたことにも気付かなかった。彼女が呆然と自分を見つめているのを見て、渡辺大輔は長い睫毛を瞬かせながら「ただの提案だよ、君次第だ」と言った。
青木翔は不機嫌そうに渡辺大輔を睨んで言った。「大輔、それは反則だろう。観戦者は黙っているのが紳士的だってわかってるだろ」