第345章 新建の最大株主の1人となる

渡辺大輔は冷たい声で言った。「調べさせろ」

夏川健志は遊び人として有名で、全国の財界では北川不動産グループの夏川若旦那が女好きな人物だということは周知の事実だった。一日で三人の彼女を変えるという驚異的な記録を作ったこともあり、最も長く付き合った彼女でもたった一ヶ月だったという。そのため、彼こそが最も浮気性だと言われていた。

野村香織が夏川健志の助手席に座っている光景を想像すると、渡辺大輔の表情は一層険しくなった。彼は野村香織が夏川健志の財力に目がくらんだ人間ではないことを知っていたが、野村香織の美貌が夏川健志にとって致命的な魅力を持っていることは確信していた。

そう考えると、渡辺大輔は自分の状況が良くないと感じた。結婚していた三年間、彼は野村香織の美しさに気付かなかったが、離婚してからというもの、野村香織はまるで別人のように輝き始めた。彼女の華やかな笑顔は渡辺大輔の心を魅了し、その魅力は日に日に増していった。彼女は多くの人々から認められるようになり、元夫である彼は、ただの野村香織に恋焦がれる大勢の男の一人に過ぎなくなっていた。

今日、夏川健志と野村香織が一緒にいるところを目撃し、渡辺大輔の心には強い危機感が芽生えた。このような不快な感覚は、彼の人生でも稀に見る経験だった。

……

花浜ヴィラ。

野村香織は帰宅するとすぐにシャワーを浴び、眠りについた。午後一時から夕方五時半まで眠り続け、目を半開きにしながら携帯電話を手に取って確認した。

斎藤雪子からメッセージが来ていた。「野村社長、鈴木珠希と小野義徳が弁護士を雇いました。弁護士があなたと面会を希望しています。被告はあなたの祖母と叔父で、結局は親族なのだから、法廷で争う必要はないと言っています。そこで、あなたのご意向を伺いたいのですが」

このメッセージを読んで、野村香織は冷笑しながら携帯電話を押さえた。「彼らの弁護士に伝えて。以前も言ったように、示談は拒否する。すべて通常の法的手続きに従って進める」