第349章 高貴な頭を下げる

渡辺大輔は野村香織を一瞥した。彼は既に公衆の面前で続けて告白したのだから、当然野村香織の反応を見たかった。しかし、彼女は淡々とそこに立ち、魅惑的なアーモンド形の瞳を渡辺大輔と夏川健志の間で行き来させているだけで、まるで無関係な傍観者のようだった。

野村香織のこの反応を見て、渡辺大輔は口をもぐもぐさせ、心臓がより一層痛むのを感じた。まるで何かが心の中に詰まっているかのように、呼吸さえ困難に感じられた。野村香織が彼を見向きもしない様子から、彼女が本当に彼のことを気にかけていないことが分かり、彼の心の痛みなど気にも留めないのは確かだった。

一分間の気まずい沈黙。丸一分間待っても、野村香織は一言も発しなかった。依然として他人事のような態度を取り続けていた。もし彼女の表情から何か態度を読み取るとすれば、それは苛立ちだった。まるで渡辺大輔が公の場で彼女に告白したことで、大きな面倒を引き起こしたかのようだった。

ついに、渡辺大輔は耐えきれなくなった。胸に詰まった思いが窒息しそうなほどになり、再び野村香織を見つめて言った。「夏川若旦那の言う通りです。離婚を選んだということは、野村香織が既に私のことを好きではないということを十分に示しています。私が彼女を好きで、慕っているのは、すべて私の一方的な思いに過ぎなかったんです。」

そう言い終えると、爆発しそうな心の痛みを堪えながら、野村香織に向かって言った。「申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました。」

彼の言葉を聞いて、野村香織は初めて反応を示した。彼女は口角を上げ、淡々とした声で言った。「渡辺社長、今後は何か言う前によく考えていただきたいですね。どんな言葉を言うべきで、どんな言葉を言うべきでないのか、よく考えてからにしてください。そうでないと、あなたは気が済んでも、他人に迷惑をかけることになりますから。」

水のように平淡な一言だったが、人を凍えさせるような味わいを帯びていた。野村香織はわずか数言で、渡辺社長を公衆の面前で万丈の深淵へと突き落とした。

目に嫌悪感を浮かべる野村香織を見つめ、渡辺大輔は何か言おうとして口を開いたが、結局一言も発することができず、最後には言いたかったことすべてが「はい、分かりました」という一言に集約された。