第360章 本当だったんだ

電話の向こうで、岡山洋子は少し焦れていた。「野村さん?まだいらっしゃいますか?」

野村香織は言った。「渡辺大輔が私のところにいます。」

その言葉を聞いて、野村香織には岡山洋子が明らかにほっとしたように聞こえた。「野村さん、渡辺社長が今熱を出していて、病院に連れて行って注射を打ってもらってもよろしいでしょうか?」

そう言った後、野村香織がしばらく返事をしないのを聞いて、自分の言い方が少し突飛だったと感じたのか、岡山洋子は慌てて謝った。「す、すみません、野村さん、やはり青木社長に電話しますね。」

夜の闇とほとんど一体となりそうな渡辺大輔の姿を見ながら、野村香織は眉を上げた。彼女は渡辺大輔のところに行って何か言うことはしなかった。なぜなら、彼女は渡辺大輔の何者でもないし、どうして彼を病院に連れて行く必要があるのか、そしてそうすれば不必要な誤解やトラブルを招きかねない。「そうですね、それでは。」