第361話 39度の高熱

完璧な曲線を描く顎、玉のように白い肌、すらりとした長い指、以前は気づかなかったが、男性でもこれほど美しく感嘆させることがあるのだと。

「ガチャン!」突然、渡辺大輔の手から水の入ったコップが床に落ち、砕け散った。透明な水しぶきが床一面に広がった。

「ちょっと、片付けて!」野村香織は我に返り、即座に命じた。

「すみません、コップを割ってしまって。手に力が入らなくて」渡辺大輔は申し訳なさそうに言った。

野村香織は無表情のまま、デリバリーの袋を開きながら尋ねた。「青木翔はいつ来るの?」

渡辺大輔は新しいコップに水を注ぎ、掃除をしている小さな子を見ながら、何も聞こえなかったふりをした。この質問には答えられないし、答えたくもなかった。

野村香織はさらに体温計を持ってくるよう指示した。「体温を測りましょう。38度以上なら、必ず病院に行かないと」