第362章 白痴になるまで熱を出す

電話の向こうで、青木翔は渡辺大輔からの電話だと思っていたが、野村香織の声を聞いて慌てて尋ねた。「おや、香織さんか。どうして君からの電話なんだ?大輔はどうした?まさか気を失ったりしてないだろうな?」

野村香織は冷たい声で言った。「青木様、海外から戻って渡辺大輔を迎えに来るんじゃなかったんですか?今、大輔の熱を測ったら39.9度もありました。あなたが迎えに来ないなら、救急車を呼びますよ」

青木翔は慌てて笑いながら言った。「まあまあ、熱が出ただけじゃないか?何を心配することがある?大輔の体力なら大したことないさ。もうこんな遅い時間だし、病院に行くのは大変だろう。水をたくさん飲ませて、君のところで一晩寝かせてやってくれ。明日の朝には元気になってるはずだよ」

野村香織は眉を上げた。「つまり、迎えに来ないということですね?」

青木翔は苦笑いしながら言った。「迎えに行かないわけじゃないんだ。本当に手が離せなくて。君も知ってるだろう、僕は付き合いが多いんだ。岡山洋子から電話をもらった時は行くつもりだったんだけど、どうしても時間が作れなくて。申し訳ないけど、君のヴィラで一晩泊めてやってくれないか。明日の朝には必ず迎えに行くから。嘘をついたら犬になってもいい。じゃあそういうことで、こっちは友達が待ってるんだ。大輔のことを頼むよ、明日会おう!」

言葉が終わらないうちに、青木翔は電話を切った。あれだけ説明したが、要するに今夜は渡辺大輔を迎えに行かないということで、大輔の命を完全に野村香織に任せてしまったのだ。

野村香織は足を踏み鳴らし、青木翔に電話して罵りたい衝動に駆られたが、ソファーに寄りかかって顔色の悪い渡辺大輔を見ると、少し気の毒に思えた。親友同士のはずなのに、こんな大事な時に見捨てるなんて。

携帯電話を渡辺大輔に返しながら、野村香織は冷たい声で言った。「青木翔は今、接待中だから迎えに来られないそうよ」

渡辺大輔は眉をしかめ、二度咳をしてから言った。「大丈夫だ、自分で帰れる」

彼の言葉を聞いて、野村香織はほっとした。「それならいいわ」