渡辺大輔は舞台の下に歩み寄り、周りの人々が野村香織について小声で議論しているのが聞こえた。彼も耳を澄まして、彼らの意見を聞こうとした。
「本当に意外だったわ。夏川社長がこれほど野村香織を気に入るなんて。彼に認められる人は、きっと何か特別なものを持っているはずよ」
「そうね。夏川さんの目は、ビジネスでも人を見る目でも非常に確かだから。こんなに大勢の前で野村香織を推すということは、相当高く評価しているってことよ」
「野村香織は美しいだけじゃなく、品があって落ち着いているわ。さっき小中真子に面と向かって罵られても、冷静さを保っていたでしょう。そんな度量は普通の人には持てないわ」
「夏川さんの言う通りね。私たち、少し偏った見方をしていたわ。人の言うがままに、野村香織を金目当ての女だと思い込んでいた。でも今や夏川家の父子も、渡辺大輔も、彼女を争っているってことは、彼女が非常に優秀な人物だってことの証明よ。彼女が名家に縋ろうとしているんじゃなく、名家の方が彼女を争っているのよ!」
「ほら、舞台上の野村香織を見て。落ち着いていて優雅で気品がある。これだけの人の前でも、少しも動揺や後ろめたさを見せない。夏川健志が彼女を好きになった理由が少し分かる気がするわ」
……
渡辺大輔は群衆の中にいて、客たちの野村香織への評価や、夏川拓海が彼女を養女にしたいという件についての意見を集めていた。彼は舞台上の野村香織を見つめ続けていた。今日の彼女は非常に上品な装いで、静かな気品を漂わせていた。ワインレッドの緩やかなウェーブヘアが肩に自然に流れ、白磁のような首筋から鎖骨にかけてのラインは、人を魅了せずにはいられない。その美しいアーモンド形の瞳には常に笑みが宿り、見る者を百花繚乱の庭園に迷い込ませるような、言葉では表現できない美しさがあった。
舞台上で夏川拓海と和やかに会話を交わす野村香織は、まるで全身から桃色の輝きを放っているかのようで、会場の大多数の男性を魅了していた。野村香織という女性は、あまりにも美しすぎた。360度どの角度から見ても死角がなく、どの角度から見ても異なる美しさがあり、一挙手一投足で男性の心を虜にしてしまう。