第377章 一番頼りになる言葉

「それで？」渡辺大輔は眉をひそめて尋ねた。

青木翔は笑って言った。「だから、彼女の心にはあなたはいないけど、今のところ他の男もいないってことだよ」

「このやろう」渡辺大輔は声を上げた。

青木翔は困惑して「何？」と聞いた。

「君と知り合って以来、君の口から出た最も的確な言葉だ」渡辺大輔は珍しく彼を褒めた。

青木翔は「……」

青木翔の言葉は冗談めいていたが、的を射ていた。今の野村香織の心には確かに彼はいないが、他の誰もいない。野村香織が他の男を好きにならない限り、まだ彼女を追いかける機会はある。そう思うと、自信が大きく膨らんだ。

渡辺大輔は再び視線を野村香織に向けた。渦を巻くような目が光を放つ。彼は尋ねた。「俺以外に、今まで野村香織をいじめた奴は誰だ？」

その質問を聞いて、青木翔は少し驚いた様子で、彼の肩を叩いて言った。「大輔、いいじゃないか。こんなに早く自信を取り戻せて」

渡辺大輔は嫌そうに青木翔の手を払いのけた。「俺は野村香織に謝ったが、昔彼女をいじめた奴らはまだだ」

青木翔は頷いた。「それで、どうするつもり？」

渡辺大輔は冷たい目で青木翔を一瞥して言った。「今夜寝る前に、そいつらのリストを俺に送れ。さもないと、明日の朝、地元のボクシングジムを案内してやる」

青木翔は「……」

二人が話している間に、六段のケーキタワーがステージに運ばれた。夏川拓海が願い事をした後、一段ずつろうそくを消し、最初の一切れを野村香織に手渡した。夏川拓海の最初のケーキを分けてもらえるということは、来賓たちも夏川拓海の意図を理解し、野村香織の地位は人々の心の中でさらに上がった。

野村香織はケーキを受け取ったが、驚いた様子も、興奮した様子も見せず、ただ落ち着いた態度を保っていた。このケーキ一切れで心境に変化は見られなかった。群衆の中で渡辺大輔は彼女をずっと見つめており、野村香織もついに男の方向に一瞥を送った。二人は8、9メートルの距離を隔てて、空中で視線を交わした。