渡辺大輔は冷たい表情を浮かべた。「時間をあげたはずだ。出て行きたくないというなら、容赦しないぞ。誰か、この三人の荷物を全部外に放り出せ。彼らの物は持って行かせろ。彼らの物でないものは一つも渡すな」
渡辺邸は彼で四代目となり、まさに由緒ある屋敷だった。四代にわたって蓄積された品々は膨大で、骨董品や書画などは数え切れないほどあった。どれを一つ競売に出しても、最低でも数百万円の価値があった。二見碧子は渡辺大輔の実母という立場を利用して、嘉星グループの株式も幾らか保有しており、毎年配当金を受け取って贅沢な暮らしをしていた。しかし、彼女は浪費家で、その配当金だけでは遊興費には全く足りなかった。骨董品を何点か密かに持ち出して競売にかけようと考えていたが、今や渡辺大輔にその目論見も潰されてしまった。
二見碧子は心中苦しんだ。自分の息子がここまで冷酷になるとは思わなかった。実の母親さえも認めないほど厳しくなっていた。今、渡辺別邸から追い出されて、二人の子供と共にどれほどの苦労を味わうことになるのか。彼らは裕福な生活に慣れきっており、今から自力で生きていくのは、まるで命を奪われるようなものだった。
実際、二見碧子が知らないことだが、彼女の嘉星グループの持株は少なくても、年間の配当金はかなりの額だった。麻雀で数百万円も負けるような彼女にとっては大したことがない金額かもしれないが、一般家庭では十年かかっても稼げないような金額だった。
息子に完全に拒絶され、二見碧子の顔は青ざめたり赤くなったりした。何か言いたそうだったが、渡辺大輔の冷たい表情を見て言葉を飲み込んだ。母親とはいえ、この息子を恐れていた。別邸では渡辺奈美子と渡辺秀雄が暴れながら泣き叫び、渡辺大輔に追い出さないでくれと懇願したが、彼はポケットに手を入れたまま、彼らを一瞥もしなかった。渡辺秀雄が這いつくばって彼の足にすがりついたが、蹴り飛ばされた。