私は麦田絵麻の肩を抱き、彼女を部屋から連れ出した。ドアが私の背後で閉まった。
麦田絵麻は長く息を吐き、私の腕を取って外へ歩き出した。
思わず尋ねた。「姫様、どうしてまるで誘拐されたような顔をしているの?」
麦田絵麻はため息をついた。「そんな感じよ」
私は聞いた。「寮に戻る?」
「あなたはどこに行くの?」彼女は私に尋ねた。
「家に帰るよ。明日、加藤律と用事があって出かけるから」私は答え、彼女を家に連れて帰れないことを上手く伝えた。
彼女はとても落胆した。「世界中の人が私を見捨てる!」
私は彼女を押した。「姫様、振り返ってドアを開けるだけで、あなたは彼らの全世界になれるよ」
麦田絵麻は口をとがらせた。「南野星、私のお父さんに頼みたいことは何もないの?」
私は一瞬戸惑った。「お父さんが私に何を手伝ってくれるの?」