第174章 阻止

「南野星！やめなさい！」穏やかな声が響き、人影が過ぎ去り、私が上げた手が支えられた。

月島糸だった。

「南野星！冷静になって！」月島糸は声を柔らかくした。

私は彼を睨みつけ、体内を駆け巡る血液がゆっくりと落ち着いてきた。

月島糸は背後にいる二人のボディガードに低く吠えた。「まだいるのか、さっさと出て行け！」

月島糸は私と時田徹也が視線を合わせるのを遮り、車椅子は押されて出て行った。

また誰かが入ってきて、床に倒れているボディガードを引きずり出した。

月島糸はゆっくりと私の手からワインボトルを取り、私も完全に冷静になった。

私は月島糸を見ず、振り返って床にしゃがみ込み、頭を抱えている麦田絵麻を助け起こした。

麦田絵麻の顔には涙の跡がついていた。

「ごめんね、麦田絵麻、驚かせてしまって」私は罪悪感を抱きながら謝った。

私は、彼女を怖がらせてしまったと思った。

麦田絵麻は顔を青ざめさせ、つぶやいた。「私が以前付き合っていた友達って、一体どんな人たちだったの？クズ？」

彼女が言っていたのは、時田徹也のことだった。

月島糸は礼儀正しく言った。「麦田絵麻さん、時田徹也は、憎しみに目が曇っているだけなんです」

麦田絵麻は彼を見た。「六旦那、あなたはまだ彼らをかばっているの？隠せるの？なぜ本心と違うことを言うの？」

月島糸は言葉に詰まった。

私は彼女を抱きしめた。「ごめん、ごめんね」

麦田絵麻は私を抱き返した。「南野星、誰にもあなたをいじめさせないわ！」

月島糸は私たちを見て苦笑いした。

私たちの食事の気分も台無しになった。この散らかった個室を見て、私はウェイターを呼び、追加料金で弁償するつもりだった。

しかしウェイターの目は月島糸を見ていた。「月島社長——」

月島糸は手を振った。「下がっていいよ」

そして彼は私たちに言った。「ここは私のお店だから、弁償は必要ないよ」

私と麦田絵麻は驚いた。

なるほど！

私は少し考えた。「じゃあ、遠慮しないわ。この件は時田家の責任にしてもらって、そもそも時田徹也が悪いんだから」

月島糸は穏やかに言った。「いいよ！時田理の勘定に入れておくよ」

「じゃあ帰るわ、もう食欲がないから」私は興ざめした様子で言った。

麦田絵麻は自分の感情に浸っていた。