私は手すりにつかまって深い海面を見つめていた。海風が私の髪を優しく揺らし、まるで前に進め、前を見て、振り返るなと励ましているようだった。
状況は人より強い。今や、半夏の願い通り、私はもう記憶喪失のことを考えなくなった。記憶があろうとなかろうと、私は前に進まなければならない。先行きは不透明で、季節の移ろいを嘆く余裕などない。
背後から足音が聞こえた。平野晴人がわざと足音を重くして近づいてきたのだとわかった。
振り返らずに言った。「みんな落ち着いた?一晩で多くの仲間を失って、きっと辛いでしょう。」
平野晴人は私から数歩離れた手すりのところで立ち止まり、私と同じように海面を見つめた。「最初から、私たちは皆、将来多くの死に直面することを知っていました。もう慣れています。」