013 会社の整理整頓

久我湊は車に乗ってから、ペンダントの房飾りを整理している藤丸詩織を恐る恐る見つめていたが、すぐに視線を外した。しかし、視線を外した後も、また思わず彼女を見てしまう。

久我湊が何度もこのように見ていると、藤丸詩織が先に我慢できなくなった。

彼女は目を上げて久我湊を見つめ、淡々と言った。「言いたいことがあるなら言えばいい。そんなに何度も振り向くから目が痛くなるわ」

「あ、そうですか？」藤丸詩織に指摘されて、久我湊はようやく自分が何度も振り向いて彼女を見ていたことに気付いた。

彼は恥ずかしそうに頭を掻き、照れ笑いをしながら、小声で自分の考えを話し始めた。「あんな男はボスにはふさわしくありません。あいつのことで悲しまないでください。世界には35億人の男がいるんです。あいつより良い男がいないはずがない」

久我湊はそう言った後、素早く藤丸詩織の表情を観察し、彼女の表情に変化がないのを確認してから、続けて話す勇気を得た。「例えば、兄貴は最高の男です。お金もあるし、身長185センチの高身長でイケメンだし、それに二人とも天才ハッカーじゃないですか。まさに運命の相手です。何より兄貴はボスのことが好きなんです。もし兄貴と付き合えば、うちの家族みんながボスのことを大切にします」

藤丸詩織は久我湊の話を聞いて、徐々に眉をひそめ、首を振りながら諦めたように言った。「確かに私は離婚したけど、あなたが慰めようとしてくれるのは分かるわ。でも、お兄さんを引き合いに出す必要はないでしょう。久我和樹がこんな風に後ろで噂されてるって知ったら、きっと許してくれないわよ」

久我湊はその言葉を聞いて、反論しようとしたが、言葉が喉まで出かかって飲み込むしかなかった。結局、兄が彼女のことを好きなのに告白もせず、ずっと片思いを続けているせいで、今彼が本心を話しても、藤丸詩織は嘘だと思ってしまうのだから。

藤丸詩織は久我湊の悔しそうな表情を見て、優しく慰めた。「もういいわ、あなたの気持ちは分かってる。安心して、私は桜井蓮のことは好きじゃないの。ただ自分の三年間を振り返って感慨深くなっただけよ」

久我湊は藤丸詩織が桜井蓮のことを好きではないと聞いてほっとし、その後怒りを込めて言った。「あのクソ野郎がボスと結婚できたなんて、まさに先祖の墓が青い煙を出すほどの運の持ち主だったのに、大切にしなかったなんて。絶対に後悔することになりますよ！」

同時に久我湊は心の中で、機会があれば必ず桜井蓮というクソ野郎を思い切り殴ってやろうと考えていた。

藤丸詩織は時計を見て、何気なく言った。「もういいわ、桜井蓮の話はやめましょう。もう遅いし、会社でサボっている連中の処理を急がないと」

「はい！」久我湊は藤丸詩織の言葉を聞いて真剣な表情になり、すぐに返事をして、運転手に速度を上げるよう指示した。

会社に着くと、藤丸詩織は森村生真に会議を開くよう指示した。

しかし、森村生真が通知してから30分経っても、全員が揃わなかった。これは藤丸詩織の予想通りだったので、彼女は焦ることなく、だらしなく社長椅子に座って待っていた。

ようやく2時間後、全員が揃った。

先頭に入ってきたのは藤丸峰で、後ろには4、5人が続いていた。彼らは皆、傲慢な態度で、入室後は一言も発せずに着席し、その行動で藤丸詩織を全く眼中に入れていないことを明確に示した。

これを見た藤丸詩織は軽く笑い、怒る様子もなく、ただ隣にいる森村生真に軽く頷いた。

森村生真は藤丸詩織の指示を受けて立ち上がり、先ほどの遅刻者の名前を一人一人読み上げ、同様に藤丸詩織が早くから渡していた書類に基づいて、これらの人々の普段の会社での行動を一つ一つ読み上げた。

森村生真が読み終えると、藤丸詩織は軽く笑い、次の瞬間テーブルを一撃。テーブルは彼らの目の前でゆっくりと裂け、崩れ落ちた。

この光景を目にした全員が衝撃を受けた表情を浮かべ、特に先ほど名前を読み上げられた人々は、心臓が震えた。

藤丸詩織は感情を抑え、冷たい声で言った。「遅刻、早退、勤務中の無断欠勤、友人や親族を会社に連れてくること、その他諸々の問題行為、全部あなたたちのやったことよ！どうなの？会社を市場か老人ホームだと思ってるの？仕事ができるならやればいいし、できないなら辞めればいい。そんな当たり前のことが分からないの？私が教えないといけないの？」

藤丸詩織の声は大きくなかったが、威圧感があった。

続いて藤丸詩織は顔を向け、森村生真に言った。「森村さん、先ほど名前を読み上げた人たちから罰金を徴収する専門の人員を手配して、それから全員解雇して。一人も見逃さないように！」