035 好きな料理を注文する

「お会いにならない?」

秘書は信じられない思いで、何度も確認してみたが、やはり同じ文字が書かれていた。桜井グループは国内外で影響力のある企業なのに、藤丸社長は会わないと言うなんて!

そんなはずはない、藤丸社長はきっと会社を引き継いだばかりで、現在のビジネス界の状況をよく理解していないのだろう。

桜井グループとの協力が会社にもたらす可能性のある利益を考えると、秘書は少し考えた後、独断で桜井家からの招待を承諾することにした。

将来、協力関係が始まって会社が発展していけば、藤丸社長も彼女の今日の賢明な判断を思い出すはず。そうすれば昇進や昇給もあり得るかもしれない!

藤丸詩織は秘書がこのような独断専行をしていることを知らなかった。もし知っていたら、即座に解雇していただろう。

時計を見ると、もうお昼時になっていた。そこで藤丸詩織は榊蒼真と久我湊に尋ねた。「今日のお昼はどこで食べる?」

榊蒼真は質問を聞くと、すぐに答えた。「姉さん、すごくいいレストランを知ってるんです。帰国するたびに行くんですが、重要なのは姉さんの好きな料理がたくさんあることです。」

藤丸詩織は榊蒼真のその言葉を聞いただけで、心が期待で一杯になり、急いでうなずいた。「いいわね!」

承諾した後、藤丸詩織は久我湊が躊躇している様子に気づき、彼に尋ねた。「どうしたの?」

久我湊は躊躇いながら口を開いた。「ボス、僕、お昼に家族の集まりがあって、必ず出席しないといけないんです。皆さんと一緒に行けそうにありません。」

「行っていいわよ。」藤丸詩織は気にせず、手を振って久我湊を行かせた。

藤丸詩織は榊蒼真についてレストランに到着した。中に入ると、古風な中国式の雰囲気が広がっており、まるで宮殿に入ったかのようだった。一目見ただけでその精緻さに感嘆せずにはいられなかった。

二人が入ってくると大きな騒ぎになり、多くの人々の視線を集めた。彼らの高い容姿は、思わず目を引きつけ、見る人々の心の中で才色兼備だと感嘆させた。

榊蒼真は来る前に既に席を予約していたので、専属のウェイターが彼らを最高の個室へと案内した。