045 藤丸詩織さん

藤丸詩織は自分のこの三年間がどんなものだったかを語らなかったが、桜井蓮はここ数日で出会った榊蒼真とのやり取りから、おおよその想像がついた。そしてそれゆえに、彼は藤丸詩織をより一層いとおしく思った。

桜井蓮は藤丸詩織が彼の口元に添えた手を優しく取り、柔らかな声で慰めた。「姉さん、過去は過去だよ。この三年にこだわる必要はない。だって、これからの三年も、三十年も…あるんだから」

藤丸詩織はそれを聞いて、軽く頷いて答えた。「うん、あの三年は最も意味のないものだったわ。確かにこだわる必要はないわね。それに比べれば、お花を植えることの方が大切だもの」

桜井蓮は藤丸詩織が理解してくれたのを見て、ほっと胸をなでおろした。

藤丸のお母さんは生前、花が大好きで、それも様々な種類の花を愛していた。そして自分の手で植えることを望んでいた。