050 私が彼を振ったの

この聞き覚えのある声に、藤丸詩織は振り向かなくても桜井蓮の妹、桜井雨音だとわかった。彼女は冷たい声で言い返した。「あなたは私の体の中の回虫なの?そうでもなければ、どうしてそんなに自信を持って私に招待状があるかないか分かるの?」

この3年間、彼女の性格がこんなにも弱々しかったのは、高遠蘭子と桜井雨音の母娘のおかげだった。

他人の前、特に桜井蓮の前では、彼女たちは良き母親、良き妹を演じ、とても良い振る舞いを見せるのだが、桜井蓮が家にいない時には、醜い本性を現し、彼女を弄ぶのだった。

特に桜井雨音は、彼女にありとあらゆることをさせた。豪邸を汚して掃除させ、家族全員の服を手洗いさせ、彼女の体に位置追跡装置を付け、何時間も歩いてタピオカを買いに行かせるなど、これらは日常茶飯事だった。