049 招待状

榊蒼真は隣の藤丸詩織を見つめ、そして相良宏の方を向いて、丁寧に言った。「相良監督にご評価いただき光栄ですが、申し訳ありません。今は絵画を見なければならないので、しばらく脚本の話をする時間がないかもしれません。」

榊蒼真の返事を聞いた相良宏は少し残念そうに言った。「この作品は今日の午後には最終キャスティングを決定しなければなりません。今回逃すと、一年後の次の作品まで協力の機会がなくなってしまいます。」

榊蒼真が国内で活動を始めると知ってから、多くの監督が彼に注目していた。相良宏は今、キャスティングの締切をこんなに早く設定してしまったことを非常に後悔していた。もう少し遅ければ、まだチャンスがあったかもしれない。

藤丸詩織は榊蒼真の断りを聞いて、少し考えると、それが自分のためだと分かった。

そのことに気付いた藤丸詩織は前に出て、「相良監督、榊さんは今時間がありますよ。お話してください」と言った。

藤丸詩織の言葉を聞いて、榊蒼真は彼女の方を向き、小声で「今は藤丸おじさんの絵を選ばなければ……」と言い始めた。

藤丸詩織は手を伸ばして榊蒼真の顔を押し戻し、「大丈夫よ、私が先に選んでおいて、気に入ったものをメモしておくわ。あなたが戻ってきたら、一緒に一番いいものを選びましょう」と言った。

榊蒼真は藤丸詩織の提案を聞いて、仕方なく「分かった」と答えた。

相良宏は榊蒼真がこれほど一人の女性の言葉に従うのを見て、意外に感じ、この時、真剣に藤丸詩織を見つめた。

藤丸詩織の容姿と、彼女が放つ強い気質を見て、相良宏は驚き、思わず尋ねた。「お嬢さん、あなたは映画のために生まれてきたような方だと感じます。芸能界に入って演技をする興味はありませんか?」

藤丸詩織はこの言葉を聞いて、少し困ったように感じた。この一日で、既に数え切れないほどの人から芸能界に入らないかと聞かれていたからだ。

藤丸詩織は心の中では困惑していたが、それでも相良宏に丁寧に断った。「申し訳ありませんが、芸能界に入る考えはありません。」

相良宏はこの返事を聞いて、少し残念に思い、藤丸詩織の完璧な素質を見て、まだ説得したい気持ちを抑えられなかった。