桜井蓮は高遠蘭子の言葉を聞いた後、目つきが一層冷たくなった。「後で相良健司にメッセージを送って、毎月の送金を一千万から十万に変更させる。それに、桜井雨音はもうあなたの側にいられない。礼儀作法を学ばせるため、専門の学校に送ることにする」
高遠蘭子はその言葉を聞いて呆然となり、我に返ると不満げに口を開いた。「毎月たった十万円で、これからどうやって生活すればいいの?それに、どうして妹を礼儀作法を学ばせるために送るの?」
高遠蘭子の言葉に対して、桜井蓮は答えを出さずに言った。「これは私の決定を通知しているだけで、相談しているわけではない」
高遠蘭子は事態がこんな風に展開するとは思っていなかった。さっきメッセージで桜井蓮を呼び出したのは、ただ一つの質問に答えてもらい、藤丸詩織の面目を潰すためだけだったのに。
そうだ、聞きたかった質問!
高遠蘭子は目を輝かせ、急いで言った。「さっき藤丸詩織に対する態度が良くなかったのは認めるわ。でも、それには理由があるの!」
桜井蓮は自分の親族がそんな悪意のある人間になるとは信じられず、高遠蘭子の言葉を聞いて思わず尋ねた。「どんな理由だ?」
高遠蘭子は「藤丸詩織が離婚を切り出したって言うのよ。あなたを振ったって。私たちはそれを聞いて我慢できなくて、だからあんなに興奮してしまったの」
桜井蓮はその言葉を聞いて、一瞬表情が硬くなり、周りを見回して冷たい表情で言った。「こんなに大勢の人が見ている。恥ずかしくないのか。早く行け」
水野月奈は桜井蓮の様子を見て、彼の側に寄り優しく言った。「蓮くん、さっきの状況は本当に複雑で、あなたが思っているようなことじゃないの」
桜井蓮は適当に「ああ」と応え、「行こう」と言った。
桜井蓮はそう言い残すと、真っ先に立ち去った。
水野月奈は桜井蓮の背中を見つめ、瞳が徐々に暗くなっていった。
水野月奈は危機感を覚えていた。以前は彼女が桜井蓮を相手にしたくなかったのに、今は逆になってしまった。さっきあれだけ長い時間一緒にいたのに、桜井蓮は彼女に一度も目を向けず、彼女の言葉にも適当に応えるだけだった。
今の状況は、彼女にとって非常に不味い!
一方、藤丸詩織は榊蒼真を連れて離れた後、引き続き絵画展を見て回っていた。
ただし、榊蒼真はその過程でどことなく元気がなかった。