055 オークション

桜井蓮が展覧会に来たのは、高遠蘭子からのメッセージを受け取っただけでなく、展覧会でのオークションで椎名頌大師の作品が出品されると聞いたからだった。彼はそれを購入して、藤丸さんのお嬢様に贈るつもりだった。

そのため、先ほど恥ずかしい思いをしたにもかかわらず、高遠蘭子たちを家に送らなかった。

オークションはまだ始まっていなかったので、彼らは展示室を見て回ることにした。

桜井雨音は絵画に興味がなく、この時心の中で特に苛立っていた。そして、ふと顔を上げると藤丸詩織の姿が目に入った。

藤丸詩織を見た途端、桜井雨音は先ほど彼女のせいで殴られたことを思い出した。

藤丸詩織が平凡な絵の前に立っているのを見て、桜井雨音は水野月奈の側に寄り、藤丸詩織を皮肉った目で見ながら言った。「水野、見てよ。やっぱり藤丸詩織は田舎者だわ。目が全然ないのね。何の見どころもない絵を見てるなんて。」