058 言いつけ

藤丸詩織は言い終わると、個室の窓を閉め、高遠蘭子を無視することにした。

それを見た高遠蘭子は怒りで体が震えた。まさか自分がこんな日に藤丸詩織のような小娘に出し抜かれるとは思ってもみなかった。

榊蒼真は藤丸詩織が戻ってきた後、困惑して尋ねた。「姉さん、僕はお金があるのに、なぜ続けて札を上げさせてくれなかったの?姉さんはあれが好きだったのに。」

この時、榊蒼真は先ほど藤丸詩織に止められた場面を思い出し、少し寂しい気持ちになった。

藤丸詩織は仕方なく溜息をつき、榊蒼真の頭を撫でながら説明した。「私たちの主な目的は椎名頌先生の作品を手に入れることよ。他のものはどうでもいいわ。それに、よく考えてみたら、絵を高遠蘭子に譲って、彼女が悔しがる顔を見る方が私にとってはもっと楽しいわ。」