周防司は桜井蓮の身から漂う冷気を感じ取り、心中の不安も募っていった。個室に着くと、椎名頌大師の作品『月』を取り出した。
周防司は「これが椎名頌大師がオークションに出品する作品です」と言った。
桜井蓮は絵を見た途端、身から漂う冷気が収まってきた。「オークションに出品される作品を今私にくれて、大丈夫なの?」
周防司は桜井蓮の質問に対して、急いで「ご心配なく、問題ありません。私はこの展示会の主催者と知り合いなので、前もって彼から買い取りました。彼はすでにこの作品のオークション出品を取り消しています」と答えた。
桜井蓮は周防司の言葉を聞くと、そのまま絵を持ち去った。
周防司は桜井蓮が立ち去る背中を見つめながら、表情は良くなかった。
せっかく絵を買って桜井蓮に贈ったのは、この絵を通じて両家の協力について話し合いたかったからだ。しかし、まさか彼が絵を受け取った後、お礼の一言も言わずに持ち去るとは思わなかった。お金を払うことなど論外だった!