062 白い粉末

椎名頌は思わず笑って言った。「それはよかった!私の絵は今東京にないんですが、明後日には届くと思います。」

藤丸詩織はその言葉を聞いて、何度も頷いて素直に承諾した。

その後、桜井蓮たちを見て、また椎名頌を見て、良心の呵責から、小声で言い出すことにした。「実は私には才能なんてないんです。ただ小さい頃から絵に触れていたから、理解できただけなんです。」

椎名頌は藤丸詩織に多くの秘密があることを瞬時に理解したが、それでもこう言った。「幼い頃から見ていたとしても、それは十分な才能ですよ。私の多くのプロの画家の友人たちは、数十年の経験があっても私の師匠の絵を理解できないんですから。」

藤丸詩織はようやくリラックスし、椎名頌と別れを告げた後、気兼ねなく立ち去った。

桜井蓮は深い眼差しで藤丸詩織の後ろ姿を見つめていた。

水野月奈はそれを見て、歯ぎしりしそうになりながら、「蓮お兄さま、私が気づかなかったのは…」

桜井蓮は水野月奈の言葉を遮り、「会社に用事がある」と一言残して、展示室から足早に立ち去った。

桜井蓮が外に出ると、藤丸詩織はすでにタクシーに乗り込んでいた。タクシーの影が見えなくなるまで見送った後、彼は携帯を取り出し、相良健司にメッセージを送った:藤丸詩織の身分は単純ではないような気がする。三年前の彼女のことを徹底的に調べてくれ!

この時、藤丸詩織は桜井蓮が自分を調査していることを知らなかったが、知ったとしても気にしなかっただろう。なぜなら、彼女は絶対に調べられることはないと確信していたからだ!

藤丸詩織はタクシーに乗り込んだ後、久我湊にメッセージを送り、高遠蘭子の様子を見張るように伝えた。

記憶を失った三年間の高遠蘭子との付き合いから、お金がなくなった彼女は必ず何か動きを見せるはずだと考えていた。

久我湊は藤丸詩織からのメッセージを受け取るとすぐに返信した:了解です、ボス!

藤丸詩織は携帯をしまい、車窓の外を見上げた。

外の建物を確認した後、彼女は危険な目つきで細めた瞳を向け、前を向いている運転手に冷たい声で尋ねた。「誰があなたを寄越したの?」