藤丸詩織は藤丸明彦が気を失ったことに気付くと、イライラしながらウェットティッシュを取り出し、果物ナイフについた血痕と指紋を拭き取った。しかし、拭けば拭くほど苛立ちが募り、思わず彼の顔を何度も平手打ちした。
藤丸明彦は藤丸家の財産のために、こんな卑劣な手段で彼女に対抗してきた。父親や父親が生前に彼にしてきた数々の世話など、まったく気にも留めていなかったのだ!
藤丸詩織は、その報いとして、藤丸明彦をただ簡単に気絶させて、少しの痛みも感じさせないでおくわけにはいかないと思った。
彼に少しずつ痛みを味わわせるべきだ。それこそが彼女のすべきことだったのだ!
藤丸詩織は藤丸明彦を麻袋から引き出し、傍らにあった銀鍼を取り出して、彼のツボに何本か刺し、意識を取り戻させた。
藤丸明彦はゆっくりと目を覚まし、軽く咳き込んだ。「ゴホッ」