073 詐欺師のことを考えている

久我湊:「名簿を受け取ったばかりです。今メールでお送りしますが、これは現時点で判明している死亡者のリストだけです。まだ不明な人もいて、調査を続けています」

藤丸詩織は名簿を開き、一つ一つの名前に真剣な眼差しを向けながら、徐々に眉をひそめていった。しかし、最後まで目を通しても、見覚えのある名前は一つもなかった。

調査は全く進展がなく、藤丸詩織は誰が自分を助けてくれたのかまだわからないままだった。

どうやら、藤丸明彦の方から手をつけるしかないようだ。

昼時、桜井家。

水野月奈は赤いロングドレスを身にまとい、桜井蓮のために用意した昼食を持って会社に入った。

道中、多くの人々の視線が水野月奈に注がれ、周りの人々は小声で話し合っていた。

「あの人誰?予約もなしに社長室に向かってるけど」