森村生真は言った。「藤丸社長、説明は不要です。あなたがどんな行動をとるにしても、必ず理由があることは分かっています。私が来たのは、長谷慧が解雇された後、あなたの周りに雑務を処理する秘書がいなくなったので、誰かを推薦したいと思ったからです」
藤丸詩織は頷き、森村の続きを待った。
森村は続けて言った。「私が推薦する人物は真壁誠といいます。一流大学を卒業し、会社に入ってからもしばらく経ちます。仕事能力も高く、秘書職をこなすのは問題ないでしょう」
彼女は長谷慧を解雇した後、新しい秘書を探さなければならないことは確かで、森村が今推薦してくれたのは、ちょうど都合が良かった。
藤丸詩織は言った。「森村さんの推薦なら間違いないでしょう。では彼に決めましょう」
森村は頷き、手元の書類を藤丸詩織の机に差し出した。「社長、これはご依頼いただいた、ここ数年の従業員名簿です」
藤丸詩織は頷きながら名簿に目を通し、同時に森村に尋ねた。「最近、従業員たちの様子はどうですか?会社の福利厚生をもう少し調整する必要はありますか?」
この質問に対して、森村は口角を上げた。「現在、会社にはエアコン、休憩室、マッサージルームなどが整備され、会社に方向性が定まったことで、従業員たちにも目標ができ、仕事にもやる気が出ています。それに、皆さん、あなたが就任してから自分のキャリアが明るい未来に向かっていると感じているようです…」
藤丸詩織は聞いているうちに、少し照れくさくなった。「森村さん、少し大げさすぎませんか?」
森村は真剣な様子で答えた。「大げさではありません。全く大げさではないんです。我が社は今や業界でもトップクラスです!桜井家よりも福利厚生が充実しているほどです」
桜井家と言えば、森村は突然あることを思い出した。
森村は藤丸詩織を見て、不思議そうに尋ねた。「そういえば社長、我が社と桜井家の協業は利点しかないと思うのですが、なぜ断られたのですか?」
藤丸詩織は微笑んで答えた。「桜井家は業界でもトップクラスですが、すべての協業が適切というわけではありません。もう少し様子を見たいと思います」
森村は今や藤丸詩織に心からの尊敬を抱いているため、この答えを聞いて、それ以上は質問しなかった。