桜井蓮は以前、服やアクセサリーについてよく分からなかったが、この頃水野月奈に多くのブランド品を買わされたため、少し理解するようになった。
桜井蓮は藤丸詩織の今日の服装を思い出し、突然彼女の身につけているものが全て限定品だと気づいた。
藤丸詩織が自分で買えるはずがない。きっとまた誰かの男からもらったんだろう!やっぱり拝金主義の女だ。毎日あちこちで男に引っかかっている。
ふん、あの時は愛してると口にしていたが、結局は金目当てだったんだろう!
藤丸詩織は桜井蓮が心の中で自分を踏みつけていることを知らなかったが、知ったとしても気にしないだろう。今は絵を探すことが何より重要だったから。
久我湊はあくびをしながら、だらだらと歩きながら不思議そうに尋ねた。「社長、こんな遅くに会社に呼び出して何かあるんですか?」
藤丸詩織は手を休めて、久我湊に答えた。「絵を探すのを手伝ってほしいの。椎名頌先生の『月』よ。」
久我湊は目を見開き、眠気が一瞬で消え、急いで物置を探し始めた。
ついに10分後、久我湊は手にしたものを持って、藤丸詩織に叫んだ。「社長、これじゃないですか!」
藤丸詩織はすぐに見て、生き生きとした画面を見た後、興奮して頷いた。「そう、これよ!」
久我湊は絵を見つけて安堵したが、そのとき、ずっと自分が見過ごしていたことに気づいた。「社長、この絵は桜井蓮が買ったんじゃなかったですか?なぜ会社の物置にあるんですか。」
藤丸詩織は絵を鑑賞しながら答えた。「桜井蓮が持ってきたのよ。」
久我湊は呆然として、我に返ると行ったり来たりしながら、心配そうに言った。「桜井蓮が突然絵を持ってくるなんて、きっと良からぬ考えがあるはずです。もしかして離婚後に、実は社長のことが好きだったと気づいて、今追いかけようとしているんじゃ...そうだ、間違いない、きっとそうに違いない!」
藤丸詩織は丁寧に絵を片付けながら、心配する久我湊を見て、あきれながら言った。「余計な想像はやめて。この絵は彼が藤丸さんにプレゼントしたもので、私は今彼の中では藤丸さんの秘書よ。それに安心して、桜井蓮は一生私のことを好きになることはないわ。」
藤丸詩織は3年間記憶を失っていたが、記憶が戻った後、その3年間に起きたことも覚えていた。同様に、桜井蓮が自分を見る目に満ちていた嫌悪感もはっきりと覚えていた。