083 必要なし

空き地の近くには家族がいて、炎の出所は彼らが料理をするために焚いた火だった。

藤丸詩織はその光景を見つめ、顔を蒼白にした桜井蓮の方を振り向くと、溜め息をつきながら彼を火から目を逸らすように背を向けさせた。「向こうに行きましょう。こんなに年月が経っているのに、まだ火を怖がっているなんて思いもしませんでした」

桜井蓮は、しばらくして頭の中に広がる炎の光景から我に返った。

子供の頃の火災で、水野月奈に助け出されたものの、心に深い傷を負い、火を見るたびに恐怖を感じるようになっていた。

桜井蓮は我に返ってから、先ほどの藤丸詩織の言葉を思い出し、不思議そうに彼女を見つめて尋ねた。「僕が火を怖がっていることを、どうして知っているんですか?」

藤丸詩織は桜井蓮をちらりと見て、淡々と口を開いた。「だって私、あの時…」