119 手は怪我していなかった

藤丸詩織は老人の声を聞いた途端、すぐに体を起こし、画面を食い入るように見つめた。

橘譲も少し意外そうに、疑問を投げかけた。「桜井家のお爺様は管理人を一人寄越しただけなのに、今度は何を言うつもりなんだろう?桜井蓮と水野月奈の結婚を祝福するのかな?」

藤丸詩織は断固として首を振り、「違います!」と言った。

橘譲は困惑して頭を掻きながら尋ねた。「詩織、どうしてそんなに確信が持てるの?」

藤丸詩織は静かに答えた。「この三年間、桜井のお爺様は私にとても良くしてくださったから。」

藤丸詩織の脳裏に桜井桉慈の姿が浮かび、桜井蓮との離婚後、お爺様がどのように過ごしているのか気になった。

橘譲は藤丸詩織の言葉を聞いて意外に思った。彼は桜井家の人々は皆良くないと思っていたが、お爺様はそうではなかったようだ。やはり年長者は経験豊富で、是非をわきまえているのだろう。