120 魔に取り憑かれたように

桜井信之は水野月奈を見つめ、淡々と口を開いた。「私たちはそのようなことは絶対にしません。水野さんが不安なら、その時は複数の異なる病院の医師に診察してもらうことができます。」

桜井信之は言い終わると、水野月奈の返事を待たずに話題を変えた。「先ほどの大画面の動画について、私にはどういうことなのか分かりませんが、一つだけ確信できることがあります。動画の内容は全て事実だということです!」

水野月奈は顔面蒼白になり、桜井信之を見る目は恐怖に満ちていた。彼女は力なく桜井蓮の腕を掴み、涙を流しながら哀れっぽく言った。「蓮お兄さん……」

桜井蓮は目を伏せて何も言わず、何を考えているのか分からなかった。

高遠蘭子は水野月奈が手の怪我について嘘をついたことに腹を立てていたが、老人が桜井信之にこうさせたのは、桜井蓮に水野月奈を嫌わせ、藤丸詩織と結婚させるためだと考えると、さらに我慢できなくなった。