120 魔に取り憑かれたように

桜井信之は水野月奈を見つめ、淡々と口を開いた。「私たちはそのようなことは絶対にしません。水野さんが不安なら、その時は複数の異なる病院の医師に診察してもらうことができます。」

桜井信之は言い終わると、水野月奈の返事を待たずに話題を変えた。「先ほどの大画面の動画について、私にはどういうことなのか分かりませんが、一つだけ確信できることがあります。動画の内容は全て事実だということです!」

水野月奈は顔面蒼白になり、桜井信之を見る目は恐怖に満ちていた。彼女は力なく桜井蓮の腕を掴み、涙を流しながら哀れっぽく言った。「蓮お兄さん……」

桜井蓮は目を伏せて何も言わず、何を考えているのか分からなかった。

高遠蘭子は水野月奈が手の怪我について嘘をついたことに腹を立てていたが、老人が桜井信之にこうさせたのは、桜井蓮に水野月奈を嫌わせ、藤丸詩織と結婚させるためだと考えると、さらに我慢できなくなった。

そこで高遠蘭子は水野月奈のために立ち上がって言った。「月奈はただの純粋な女の子よ。お義父様が藤丸詩織のことが好きだからって、月奈を冤罪に巻き込むのは良くないわ。」

桜井信之はこの言葉を聞いて、高遠蘭子を見る目が一変した。

以前、老人が高遠蘭子の愚かさについて話していた時、彼は使用人として何も言えなかったし、普段も彼女と接点がなかったため、それについての認識もなかった。しかし今、実際に会ってみると、老人の言葉は間違っていなかった。高遠蘭子は本当に愚かだった。

桜井信之は心の中で溜息をつき、高遠蘭子を見上げて真剣に言った。「奥様がお信じにならなくても構いません。老人は証人を用意しています。」

桜井信之の言葉が落ちると、外で待機していた人を入れさせた。

水野月奈はこの言葉を聞いて更に不安になった。何か良くないことが起こりそうな予感がして、この時、心の中で非常に後悔していた。こんなことになるなら、桜井蓮が結婚式を延期すると言った時に、すぐに同意すべきだった。それに、桜井信之の言う証人とは誰なのか?

きっと彼女を脅すためだけの言葉なのだろう。証人なんて出てくるはずがない!

しかし次の瞬間、水野月奈はドアから入ってきた男を見て、瞳孔が驚きで開いた。