142 恋愛の予定なし

橘譲は藤丸詩織の保証を得て、やっと安心して口を開いた。「それじゃ、先に二階に上がるよ。何かあったら呼んでくれ」

藤丸詩織は頷いて答えた。「わかった」

周防司は橘譲の去っていく背中を見ながら、思わず藤丸詩織の側に寄って尋ねた。「さっき何を話してたの?」

橘譲と藤丸詩織の二人の声があまりにも小さかったため、周防司は耳を澄ましても聞き取れなかった。

藤丸詩織は欠伸をしながら、適当に答えた。「あなたの褒め話よ」

周防司はその言葉を信じられず、少し考えてから言った。「なんか、僕の悪口を言ってた気がするんだけど」

藤丸詩織は意外そうに周防司を見た。まさか彼がそこまで察していたとは思わなかった。

しかし事実はそうだったものの、藤丸詩織は答えるつもりはなく、話題を変えた。「で、他に何か目的があるの?」