橘譲は藤丸詩織の保証を得て、やっと安心して口を開いた。「それじゃ、先に二階に上がるよ。何かあったら呼んでくれ」
藤丸詩織は頷いて答えた。「わかった」
周防司は橘譲の去っていく背中を見ながら、思わず藤丸詩織の側に寄って尋ねた。「さっき何を話してたの?」
橘譲と藤丸詩織の二人の声があまりにも小さかったため、周防司は耳を澄ましても聞き取れなかった。
藤丸詩織は欠伸をしながら、適当に答えた。「あなたの褒め話よ」
周防司はその言葉を信じられず、少し考えてから言った。「なんか、僕の悪口を言ってた気がするんだけど」
藤丸詩織は意外そうに周防司を見た。まさか彼がそこまで察していたとは思わなかった。
しかし事実はそうだったものの、藤丸詩織は答えるつもりはなく、話題を変えた。「で、他に何か目的があるの?」
周防司は藤丸詩織に近づき、頭を下げて小声で言った。「藤丸さん、そんな言い方は違うと思います。僕はただあなたと友達になりたいだけで、もし縁があれば付き合いたいと思っているだけです。それがどうして目的と呼べるでしょうか?」
藤丸詩織は目の前の周防司を見て、手で彼を押しのけながら冷たく言った。「話すときはそんなに近づかないで。今回は大目に見るけど、次にそんなことをしたら容赦しないわよ」
藤丸詩織はそう言いながら、何気なく周防司の下半身に視線を向けた。
周防司は藤丸詩織の視線に気付き、思わず体が震え、特に下半身に冷たい感覚が走った。
脅されたにもかかわらず、周防司の心の中の興味はさらに大きくなった。藤丸詩織が想像以上に刺激的で、より挑戦しがいがあり、さらに好きになってしまったからだ。
周防司は藤丸詩織の視線の下で、頭を下げて答えた。「はい、次は気をつけます。それで、藤丸さんは僕の先ほどの言葉についてどう思いますか?」
藤丸詩織はソファに寄りかかり、手首の銀のブレスレットを見下ろしながら淡々と言った。「諦めなさい。恋愛する気はないわ」
周防司は頷いて、納得したように言った。「わかりました。きっと桜井蓮に深く傷つけられて、今は男性を信じられなくなってるんですね!」
藤丸詩織は眉をひそめた。まさか周防司がそんな結論を出すとは思わなかった。違うと言おうとしたが、