桜井蓮は周防司の声を聞いて、眉間の皺が少し緩んだ。椅子に寄りかかりながら答えた。「違う」
ニュースの件については、相良健司に危機管理広報を任せ、事後の影響を最小限に抑えたが、まだ噂を広めている人がいた。
しかし桜井蓮は最悪の事態を想定していたため、この件を気にかけていなかった。
周防司は軽く笑い、感心したように言った。「兄弟、メンタル強いな。でもあの水野月奈は一目で分かるクズだったのに、お前が落ちぶれてた時は海外に行って、成功したら戻ってきやがった。なのにお前は目が見えてないみたいに気付かなかった」
桜井蓮は目を伏せ、冷たく言った。「用件がないなら、切るぞ」
周防司はそれを聞いて、慌てて言った。「あるある、用件がある!」
今回彼が桜井蓮に電話したのはこの件のためで、電話を切られるわけにはいかなかった。
周防司は「実は言わなくてもいいんだけど、俺たち兄弟だし、一応言っておいた方がいいと思って。俺、藤丸詩織のことが好きになって、追いかけたいんだ」
あのバーでの一件以来、周防司は藤丸詩織が特別に輝いて見え、今では見れば見るほど神秘的で、とても魅力的に感じていた。
桜井蓮は固まり、我に返って眉をひそめ、冷たい声で尋ねた。「もう一度言ってみろ!」
周防司は桜井蓮が怒っているのを感じ取ったが、それでも言った。「俺が藤丸詩織のことを好きになって、追いかけたいって言ったんだ!」
桜井蓮は即座に否定した。「だめだ!」
周防司は組んでいた足を下ろし、不思議そうに尋ねた。「なんでだめなんだよ?それに、お前と藤丸詩織はもう別れたんだろ?彼女のことを管理する権利なんてないはずだ。もしかしたら、彼女は俺のことを好きかもしれないじゃないか?」
確かに彼は桜井蓮より見た目は劣るかもしれないが、藤丸詩織はあまりにもイケメンな男は好きじゃなくて、自分のようなタイプが好みかもしれない。
桜井蓮は周防司がこれほど自惚れているとは思わなかった。冷笑して言った。「暇があったら鏡を見てみろ。お前のどこに藤丸詩織が好きになるような要素があるんだ?確かに俺は彼女と離婚したが、分かっている。彼女は絶対にお前みたいな遊び人は好きにならない!」