桜井蓮は水野月奈の激しい抵抗を見て、一時的に承諾するしかなかった。
医療箱から包帯を取り出して彼女の傷を包み、水野月奈の手首の傷跡を見ながら、桜井蓮の包帯を巻く動作は優しくなった。
水野月奈はそれを感じ取り、心に希望が芽生えた。彼女は桜井蓮が自分のことをまだ好きかもしれないと思い、もしかしたら自分の言葉を信じてくれるかもしれないと。
水野月奈はそう考えると、顔を上げて桜井蓮に向かって言った。「蓮お兄さん、私を信じて。結婚式のビデオの人は、誰かが合成して私を陥れようとしたの。もし私を信じてくれないなら、私、生きていく意味がないわ…」
桜井蓮の水野月奈を見る目はますます複雑になっていった。
彼は人の過去にこだわる人間ではなかったので、ビデオの人物が水野月奈だと確認しても結婚式を取り消そうとは思わなかった。彼が本当に気にしていたのは嘘だった。