166 50万円のネクタイ

風見雪絵は水野月奈の機嫌を取るため、彼女が自分を押し倒したことを全く責めず、周りで見物している人々に向かって言った。「皆さん、こちらに集まらないでください。もし立ち去らないのであれば、警備員を呼んで店から追い出し、永久ブラックリストに入れて二度と入店できないようにします！」

周りの多くの人々の表情が険しくなった。

風見雪絵は多くの人が立ち去らないのを見て、直接警備員を呼んで彼らを追い出させた。

藤丸詩織は眉をひそめて尋ねた。「この店はいつもこんな商売の仕方をしているんですか？」

風見雪絵は軽蔑した口調で言った。「私たちの商売の仕方は私たちの勝手です。あなたに何の関係があるんですか？あなたたちも大人しく出て行かれたほうがいいですよ。さもないと警備員を呼んで追い出すことになりますから。」

水野月奈は風見雪絵に賞賛のまなざしを向け、笑いながら言った。「さっきのネクタイを包んでください。今から会計します。」

風見雪絵は内心不満だった。ここまでやったのに、水野月奈が結局ネクタイ一本しか買わないなんて。でも桜井蓮が水野月奈の後ろ盾にいることを思い出すと、その不満はたちまち消え去った。

風見雪絵はネクタイを持って、水野月奈の会計に向かった。

水野月奈はネクタイを一本奪うように買うと、まるで勝利を収めた将軍のように、胸を張って傲慢に藤丸詩織の前を通り過ぎた。

藤丸詩織は全く気にする様子もなく、横にいる榊蒼真に向かって言った。「さっきより素敵なネクタイがまだいくつか目に入ったわ。それにこの店のスーツもなかなか良さそうね。いくつか買ってあげましょう。」

榊蒼真は首を振って言った。「姉さん、僕が払います。この数年でかなり稼いでいるので、もう昔のような無一文の哀れな少年じゃないんです。」

藤丸詩織はきっぱりと断った。「だめよ。私からのプレゼントって決まってるでしょう？あなたに払わせるわけにはいかないわ。」

藤丸詩織はそう言うと、すぐに先ほど風見雪絵に追い出された店員を呼んで、スーツとネクタイを見に行った。

藤丸詩織の買い物は早く、たった十数分で榊蒼真のために数十着のスーツと、それに合わせるネクタイ、インナー、靴などを選んだ。

榊蒼真は藤丸詩織がまだ買おうとするのを見て、急いで止めた。「姉さん、さっきは数着だけって言ったじゃないですか。今はもう多すぎます。」