172 携帯を叩き壊すほど怒る

水野月奈は桜井蓮の考えを知らなかったが、彼が受け取るのを見て安心し、笑顔で言った。「病院まで送ってくれる?」

桜井蓮はきっぱりと断った。「会社に用事があるから、自分で帰れ」

桜井蓮はそう言うと、水野月奈の反応を待たずに足早に立ち去った。

水野月奈は桜井蓮の背中を見つめ、信じられない様子でその場に立ち尽くした。

水野月奈は、藤丸詩織に虐められたという話を聞いて来てくれたのだと思っていたが、まさか彼が彼女のことを一言も気にかけず、そそくさと帰ってしまうとは。

もしかして桜井蓮は藤丸詩織のために来たのか?

いや、そんなはずない。あんな女のために来るわけがない!

水野月奈は必死に否定し続けたが、藤丸詩織のことを考えると、心の底から憎しみが湧き上がってきた。

桜井蓮が店を出ると、数人の店員が包装された品物を手に持って車に積んでいるところだった。