179 独占欲

榊蒼真は先ほどの場面を思い返し、やっと安堵のため息をつきましたが、それでも我慢できずに口を開きました。「姉さん、さっきの行動は本当に危険すぎました。もし昔のように事故が起きたらどうするんですか!せっかく戻ってきてくれたのに……」

榊蒼真は話しているうちに、目が赤くなってきました。

藤丸詩織は榊蒼真の様子を見て、急いで約束しました。「大丈夫よ、これからは絶対にそんなことはしないわ。もしするとしても、自分の安全が確保できる状況でだけよ!」

榊蒼真は藤丸詩織の約束を聞いて、目に浮かんでいた涙をようやく押し戻しましたが、激しく鼓動する心臓は、しばらくの間落ち着きを取り戻せませんでした。

もし自分が間に合わなかったら、今頃どんな状況になっていたか想像するのも怖かったのです。

藤丸詩織は榊蒼真が心配そうな様子を見て、すぐに慰めの言葉をかけ続けました。

桜井蓮は藤丸詩織をじっと見つめ、表情がどんどん冷たくなっていきました。

周防司は桜井蓮の様子を見て、小声で尋ねました。「嫉妬してるの?」

桜井蓮は冷たく鼻を鳴らし、軽蔑した口調で言いました。「僕が嫉妬するわけないだろう?」

周防司は桜井蓮の返事を聞いて、笑いながら言いました。「嫉妬してないなら良かった。それは君が藤丸詩織のことを好きじゃないってことだから、僕も安心して彼女を追いかけられる。でも君が嫉妬してようがしてまいが関係ない。僕は藤丸詩織を追いかける決心をしたんだ。君の考えで変わることはないよ」

桜井蓮は下げていた手を無意識に握りしめ、周防司を見つめながら歯を食いしばって言いました。「藤丸詩織なんて、どこを見ても普通じゃないか。君が何を気に入ったのかさっぱりわからない!」

周防司は桜井蓮の様子を見ても怖がる様子もなく、すぐには質問に答えず、首を傾げてさらりと言いました。「君さっき台車を止めに行かなかったのは、藤丸詩織が避けると思ってたからでしょう?だから彼女を抱きかかえようと飛び出したんだよね。でも彼女が台車を押しに行くなんて予想してなかった」

桜井蓮は言葉を失いました。

周防司はそれを見て、さらりと追い打ちをかけました。「ほら見て、君は本当に藤丸詩織のことを何も分かってないんだ」