183 脚の感覚が失われた

藤丸詩織はまたグラスを数個手に取り、彼女の顔に酒を浴びせかけながら、冷ややかに言った。「知らないし、知りたくもない」

若宮玲奈の顔が青ざめ、自ら口を開いた。「教えてあげるわ。私は次世代の世界的トップモデルになるのよ。長谷正樹を知ってる?きっと知ってるでしょ。彼が手をかけた人は必ず成功する凄腕マネージャーで、しかも榊蒼真のマネージャーでもあるのよ!」

藤丸詩織は何も言わず、ただ若宮玲奈に視線を向け、彼女が何を言い出すのか見守っていた。

若宮玲奈は藤丸詩織の期待を裏切らず、続けて言った。「先日、長谷正樹が私を訪ねてきて、契約したいって言ったのよ!私が彼と契約したら、世界中で大ブレイクするわ。そうしたら、私のファンにあなたをネットリンチさせてやるわ!」

周りの人々は若宮玲奈の藤丸詩織への脅しには関心を示さず、むしろ感嘆の声を上げ、彼女を熱い視線で見つめていた。

彼らは小さな芸能人やモデルに過ぎず、今日のパーティーには入場すらできず、ただ入り口で待機し、誰かに見出されて出世のチャンスを掴もうと待ち構えていた。

彼らは長谷正樹と契約しようとしているこの人物こそが、自分たちのチャンスだと考えていた。

藤丸詩織は若宮玲奈の脅しに対して、相変わらず冷静な表情で言った。「私をどうしようとするかには興味がない。ただ誰があなたにそんなデマを教えたのか、そしてあなたがどんな目的でそれを広めているのか知りたいだけよ」

若宮玲奈の顔に一瞬の動揺が走ったが、平静を装って言った。「目的なんてないわ。デマでもない。だって藤丸詩織は私が言った通りの人間なんだから!」

若宮玲奈から何か得ようとする周りの人々が、次々と口を開いた。

「これがデマなわけないでしょう。聞いただけで本当らしいもの」

「私は本当だと思うわ。仮に本当じゃなくても、その藤丸詩織に問題があるんでしょう。だって世界中にこんなにたくさんの人がいるのに、なぜ他の人じゃなくて彼女についてデマが出るのかしら?」

「あなたは美人だけど、余計な口出しはやめなさい。私たちは藤丸詩織の話をしているのよ。あなたの話じゃないわ!」