榊蒼真は若宮玲奈の期待に満ちた視線の下、足早に歩み寄ってきた。
人々は榊蒼真を見かけると沸き立った。まさか国際的なスーパースターを目の当たりにできるとは。彼の足にすがりつけば、これからの生活は安泰だと思うと、皆が競うように若宮玲奈の味方をして声を上げ始めた。
「榊先輩、あの女があなたの師妹を殴ったんです。」
「私たちも師妹さんを助けようとしたんですが、あの女の動きが素早すぎて、全く手出しができませんでした。」
「よくも師妹さんの足を傷つけましたね。仕返ししませんか?私が手伝って、あの女の足をぶち壊してやりますよ!」
……
人々は我先にと叫び声を上げた。
しかし、彼らの予想に反して、榊蒼真は地面に倒れている若宮玲奈には目もくれず、代わりに人を殴った女性の側に歩み寄り、優しい表情で彼女の手を優しく取った。