185これらは飾りではない

長谷正樹は藤丸詩織の言葉を聞いた後、すぐに承諾し、電話を切った。

若宮玲奈は事実がこのようなものだとは思わなかった。藤丸詩織を殴りたいほど怒っていたが、この時になってようやく、自分の脚に感覚がなくなっていることを実感した。

若宮玲奈は藤丸詩織を憎しみの眼差しで見つめ、「よくも私の脚を折ったわね。私はモデルよ。あなたは私の将来のキャリアを台無しにした。絶対に許さないわ。最高の弁護士を雇って訴えてやる。必ずあなたを刑務所に送り込んでやるわ!」

藤丸詩織の表情は少しも変わらず、若宮玲奈の方へ歩み寄った。

榊蒼真はそれを見て、藤丸詩織の服の裾を掴み、声を上げた。「お姉さん、行かないで。彼女があなたを傷つけるかもしれない」

藤丸詩織は静かに言った。「大丈夫よ。私は傷つかないわ。私の実力を信じていないの?」

榊蒼真は藤丸詩織の自信に満ちた様子を見て、徐々に彼女の服の裾から手を離し、軽くうなずいて「信じています」と言った。

しかし榊蒼真は手を離しても、常に藤丸詩織の様子を見守っていた。

若宮玲奈は藤丸詩織を見ると、目に敵意を満たし、両手に力を込めて、彼女が近づいてきたら即座に行動に移れるよう準備していた。

藤丸詩織は若宮玲奈に近づくと、小声で言った。「脚を治したいかしら?」

若宮玲奈の緊張した動きが止まり、思わず「ええ」と答えた。

彼女はモデルだった。これからの活動全てにこの脚が必要だった。

しかし若宮玲奈は答えた直後に我に返り、警戒の目で藤丸詩織を見つめ、冷たい声で言った。「あなたの狙いは分かってるわ。きっと私の脚を治せるという口実で、私から何か情報を引き出そうとしているんでしょう?」

藤丸詩織は若宮玲奈を賞賛するように見つめ、そして言った。「私に関する噂を広めた人物が誰なのか知りたいの」

若宮玲奈は案の定といった表情を見せ、それから眉をひそめ、疑問げに尋ねた。「あなたの噂?」

若宮玲奈は質問した後、すぐに気づいて言った。「あなたが藤丸詩織?」

藤丸詩織はうなずいた。「そうよ」

若宮玲奈はそれを知ると、嘲笑的な表情を浮かべ、軽蔑した口調で言った。「まさか藤丸さんがこんなに愚かだとは思わなかったわ。私はあなたが私の脚を治せるなんて信じないって言ったのに。だって感覚もないのよ。それなのにこんな馬鹿げた...あっ!」