194 雰囲気を楽しむ

榊蒼真は藤丸詩織の方を向いて、優しく尋ねた。「お姉さん、レースを見に行きたいですか?」

藤丸詩織は目を輝かせながら榊蒼真を見て言った。「見たい!そうそう、この後、私の三番目のお兄さんの橘譲もこのレースに参加するの。すごく強いのよ。レースが終わったら、紹介してあげる」

榊蒼真の瞳に一瞬暗い光が宿ったが、すぐにいつもの素直な様子に戻り、頷いて言った。「はい、お姉さんの言う通りにします」

桜井蓮が藤丸詩織の方を向くと、彼女が榊蒼真と笑顔で話している姿が目に入った。

周防司は桜井蓮の動きに気付かず、司会者の言葉を聞いた後で尋ねた。「この後、レース見に行く?」

桜井蓮は冷たく答えた。「行かない」

周防司「そう、じゃあ俺一人で...あれ、どこ行くの?」

周防司は桜井蓮が突然立ち上がった理由が分からなかったが、後を追って歩いて行った。