192 他人

周囲の人々は藤丸詩織と桜井蓮の二人の対峙する雰囲気を見て、思わず話し始めた。

「桜井グループの桜井社長と藤丸家のお嬢様、仲が良くなさそうですね。ビジネス界で大きな戦いが起きるのでしょうか?」

「分かりませんが、普段は人と親しくせず、冷淡で有名な榊蒼真が、藤丸さんの前でこんなに優しいなんて!」

「そうそう、全然人を寄せ付けない雰囲気じゃないわ!」

……

展示会は前後半に分かれており、間に30分の休憩時間があり、主催者は参加者全員に休憩室を用意していた。

桜井蓮は暗い眼差しで、藤丸詩織と榊蒼真が一緒に離れていくのを見つめていた。

榊蒼真は会場の刺繍の図のことを忘れず、藤丸詩織に優しく言った。「お姉さん、もっと素敵な刺繍の図を買ってあげるから、悲しまないで。」

藤丸詩織は笑って言った。「ありがとう。でも私は悲しんでないわ。早く部屋に戻って休んでね、私のことは心配しないで。」

藤丸詩織は榊蒼真を部屋に押し込んだ後、自分の部屋に戻った。

榊蒼真は部屋に戻るとすぐに電話をかけ、刺繍の図を探すよう人に頼んだ。

電話を切った後、榊蒼真は今日の桜井蓮のお姉さんへの執着と、三年間の虐めを思い出し、瞳が暗くなった。

このままにはしておけない、必ずお姉さんの仕返しをする機会を見つけなければ!

藤丸詩織が休憩室に戻ると、思いがけず橘譲から電話がかかってきた。

電話がつながるとすぐに、橘譲の声が聞こえてきた。

橘譲:「詩織、帝都ホテルで展示会の後にレースがあるんだけど、見に来ない?」

橘譲はそう言った後、さらに強調して付け加えた。「三郎も後で参加するよ!」

藤丸詩織は橘譲の声に含まれる期待を聞いて、思わず笑い声を漏らし、続けて言った。「三郎が出るレースなら、絶対に見に行くわ。」

橘譲は肯定的な返事を得て、歓声を上げた。

橘譲は藤丸詩織としばらく話した後、もじもじしながら言った。「詩織、展示会のあのモデルの件、三郎に誰が仕組んだのか調べてもらう?」

藤丸詩織は一瞬驚いたが、橘譲もこのことを知っていたとは思わなかった。しかしすぐに我に返り、自信を持って言った。「大丈夫よ、私は既に疑わしい人物がいて、今調査を依頼したところ。すぐに結果が分かるはずよ。」

橘譲は安心して、優しく言った。「そう。」