周囲の人々は藤丸詩織と桜井蓮の二人の対峙する雰囲気を見て、思わず話し始めた。
「桜井グループの桜井社長と藤丸家のお嬢様、仲が良くなさそうですね。ビジネス界で大きな戦いが起きるのでしょうか?」
「分かりませんが、普段は人と親しくせず、冷淡で有名な榊蒼真が、藤丸さんの前でこんなに優しいなんて!」
「そうそう、全然人を寄せ付けない雰囲気じゃないわ!」
……
展示会は前後半に分かれており、間に30分の休憩時間があり、主催者は参加者全員に休憩室を用意していた。
桜井蓮は暗い眼差しで、藤丸詩織と榊蒼真が一緒に離れていくのを見つめていた。
榊蒼真は会場の刺繍の図のことを忘れず、藤丸詩織に優しく言った。「お姉さん、もっと素敵な刺繍の図を買ってあげるから、悲しまないで。」
藤丸詩織は笑って言った。「ありがとう。でも私は悲しんでないわ。早く部屋に戻って休んでね、私のことは心配しないで。」