191榊蒼真は私の人

藤丸詩織は軽く笑って、続けて言った。「ネックレスの代金は、私がすでに支払いましたから、あなたが払う必要はありませんよ」

榊蒼真は我に返り、藤丸詩織に100億円を送金しようとした。

しかし藤丸詩織は榊蒼真が何を言おうとしているのかすぐに察し、急いで話題を変えた。「展示会を続けて見ましょう!」

藤丸詩織はそう言うと、ステージに真剣な眼差しを向けた。

榊蒼真は藤丸詩織の真剣な様子を見て、邪魔をするのを恐れ、一時的に言葉を飲み込んだ。

彼が視線を展示台に戻すと、今展示されているのは刺繍の図だった。

藤丸詩織はそれを見て目を輝かせ、すぐにプレートを上げた。「100万円」

刺繍のファンは多くなかったため、藤丸詩織が値段を言った後は誰も声を上げなかった。

しかし藤丸詩織が予想もしなかったことに、桜井蓮がまたプレートを上げた。

桜井蓮は「300万円」と言った。

藤丸詩織は軽くため息をつき、結局我慢できずに桜井蓮の方を向いて尋ねた。「私に対抗しているんですか?」

桜井蓮は冷たい声で答えた。「いいえ、単に気に入っただけです」

藤丸詩織は冷笑した。

桜井蓮の「気に入った」というのは彼女とずいぶん偶然が重なるものだった。彼女がネックレスを競り落とそうとした時も彼は競り、今度は刺繍の図を競る時も同じように競っている。

藤丸詩織は桜井蓮が本当に気に入ったとは信じられなかった。結婚していた期間中、彼が刺繍に興味を示すところを一度も見たことがなかったのだから。

榊蒼真はプレートを上げて叫んだ。「1000万円」

桜井蓮は冷たい目で榊蒼真を一瞥し、「2000万円!」と言った。

榊蒼真がさらに競ろうとした時、思いがけず彼のプレートを上げる手が藤丸詩織に押さえられた。

榊蒼真は首を傾げて不思議そうな表情を浮かべた。

藤丸詩織は軽く首を振り、そして桜井蓮の方を見て言った。「私たちは降ります」

藤丸詩織が諦めたため、刺繍の図は桜井蓮が落札した。

周防司も理解できなかったが、藤丸詩織がもう競らないような様子を見て、しばらく考えた後、結局競りに参加しなかった。

桜井蓮は落札後、唇の端を上げ、軽蔑的に榊蒼真を一瞥して嘲笑った。「やはり玉の輿狙いの男だな。金すら惜しむとは」