藤丸詩織はこの光景を目にして、頭が痛くなった。元々桜井蓮一人だけだったのに、今度は周防司まで加わってしまった。
藤丸詩織がそう考えていると、次の瞬間スマートフォンが鳴り、周防司からのメッセージだった。
周防司:気に入ったなら、写真を撮って送るよ。
藤丸詩織の返信:いらない。気に入ったら、自分で撮る。
藤丸詩織はこのメッセージを送った後、周防司が言うことを聞かないかもしれないと思い、もう一言付け加えた。
藤丸詩織:撮らないで!
桜井蓮は藤丸詩織と周防司が何を話しているのか分からなかったが、二人が揃ってスマートフォンを見つめる様子を見て、さらにイライラが募った。
桜井蓮はネクタイを手で引っ張り、やっと一息ついて、パドルを上げて叫んだ。「6億円」
周防司はさらに値を上げようとしたが、藤丸詩織から送られてきたメッセージを見て、少し躊躇した後、しょんぼりと手を下ろした。
藤丸詩織は即座に叫んだ。「10億円!」
瞬間、会場は更に沸き立った。
「すごい、10億円まで行くなんて」
「最初の8000万円の時点で高いと思ったのに、今や10億円だなんて、天文学的な数字だわ」
「藤丸さんはお金持ちすぎるわね。これは彼らの会社との提携が有望だということかしら。帰ったら株主総会を開かないと!」
……
桜井蓮は深いため息をつき、藤丸詩織が榊蒼真のためにここまでするとは思わなかった。
このネックレスは確かに綺麗だが、1億円でも高値だというのに、藤丸詩織は10億円まで出すなんて!
藤丸詩織は桜井蓮の冷たい視線と真っ直ぐに向き合い、尋ねた。「まだ値を上げる?」
桜井蓮は答えず、ただ藤丸詩織を見つめていた。
藤丸詩織はそれを見て、続けた。「値を上げても構わないわ。私もさらに上げられるから。このネックレスは絶対に手に入れるわ」
桜井蓮は顔を青くした。確かに値段を上げたいが、これだけの金額を出せば会社の運営に大きな影響が出てしまう。
司会者は我に返ると、興奮して笑い、もう誰も値を上げないのを確認してから、木槌を手に取り興奮気味に叫んだ。「10億円、1回目!10億円、2回目!10億円、3回目!落札!ネックレスの最終的な所有者は、藤丸詩織さんに決定しました!」
会場では祝砲が鳴り響き、人々の歓声が上がった!